創作物置場

文章や落書きなんかを置いてゆく予定。

 
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【GKH】小説 その1

【青き者達の行進曲】
 シュタルクシルトの騎士団長と第一部隊の面子の日常風景。
 それと、年老いた騎士団長の想いだとか。

 ※リスティアの歴史について独自の解釈が含まれている小説です。閲覧注意。



 これは、とある国の騎士団の日常。
 そして、若き騎士達と共に歩む老騎士の、想い。



 今日のリスティア北方の地ユニオンは、歩けば自然と歌を口ずさみたくなるほど気持ちの良い快晴であった。
 新緑の絨毯の中から色取り取りの野花が太陽に向かって顔を向け、それらに囲まれた砂と土とで描かれる長く伸びた街道を、騎士団長ノイルズ、従騎士リーシャ、その後ろから更に重戦士シグレ、戦乙女ヒョウガ、狩人アーサー、そして最後は魔術師ジウといった順番で歩く。彼等はユニオンの一騎士団である『シュタルクシルト』の面々だ。
「ふぁ~、今日はほんっとに良い天気だなぁ」
 先ほどから自作の適当な鼻歌を歌っていた白に近い銀髪の青年アーサーが、軽い欠伸を一つ溢しながらのんびりと呟く。すると赤頭巾をかぶった金髪の少女リーシャは、後ろを振り向き、蒼天の空で暖かな光を放つ太陽のような笑みを浮かべて力強く頷いた。
「えぇ、今日は絶好の周辺警護日和ですね!」
 リーシャの意気揚々とした発言に、言葉を振ったアーサーは「その返しは予想外だった!」とばかりに目を丸くする。
 そんな彼の面食らった表情に浅葱の髪をした少女ヒョウガは、まるで悪戯っ子のような含みのある笑みを溢し、
「ふふっ、そうだね! 特にアーサーにはいっぱい活躍してもらわなくちゃ!」
 と、畳み掛けるようにしてリーシャの意見に賛同した。それにアーサーがギョッとして「ちょっ!」と慌てた声を上げたのは言うまでもなく。
 いつもはからかわれる立場が、今ではすっかり逆転しているのが可笑しくて。ヒョウガはニコニコとしながらシグレに「ねっ?」と目配せする。
 目配せされた紅髪の青年シグレはというと、真面目に一つ頷いて、
「そうですね。アーサーの卓越した洞察力と射撃の正確さは非常に心強いですから」
 と、ヒョウガの意に――少々そぐわない形になっているとも知らずに――賛同し、アーサーへの畏敬の念を口にした。
 シグレとしては大真面目に、そして素直に口にした言葉であったのだが、対するヒョウガとアーサーの表情はすっかり逆転している。
「へへへっ、嬉しい事言ってくれるじゃねーかシグレ! そこまで言われちゃあ、俺もガッツリ本気を出さねーとな!」
 アーサーはそれはもう鼻高々でご機嫌で、一方的に左腕でシグレと肩を組んでガハハと豪快に大笑い。
 一方のヒョウガは、ポカンとした表情をした後、ムスゥとして頬っぺたを膨らませた。見事な逆転劇である。
 これは一体何事か、と対照的なヒョウガとアーサーを交互に見やって動揺するシグレ。
 そして、慌てふためく息子と仲間達の様子を黙って眺めていた紅髪の男ジウは、「おやおや」と和やかに微笑んだ。
 若き騎士達の何とも暢気で何気ないやり取り。先頭を歩く銀髪の老騎士ノイルズは、そのまま歩みを止める事なく口元を緩めて快活に笑った。
「はっはっはっ、確かに今日は活動し易い気候じゃな。まさに周辺警護日和かもしれん。皆の活躍に期待しておるぞ」
「はいっ! 異変があったら私がすぐ皆様にお知らせしますからね!」
 ノイルズの言葉に元気良く返事をしたリーシャは、ペノン(長三角旗)を高々と掲げ、心地の良い風にそれをばさりと靡かせる。その小気味良い音に続くようにして、騎士達の返事もそれぞれに聞こえてきた。
 自慢の騎士達の返事にうむうむと頷くノイルズ。だが、その表情にほんの少しだけ、哀の感情が差す。
「……まぁ、こんな天候の日には、誰もが日向ぼっこでもしてくれていれば平和で良いのだがのぅ」
 その言葉は誰に言うでもなく。中老の騎士は密やかにひとりごち、苦笑した。
 そよ風に揺れる周辺の草木も、すれ違う行商人や旅人も、今日は特別穏やかに見える。
 ここ暫くは戦地でユニオンが連勝を収めていると聞く。故にユニオンの領地は比較的のんびりとした空気が流れているのだろう。
 だが、これも束の間の平和でしかない。自国領を奪われたログレスやアヴァロンの攻撃が熾烈を極めるのは火を見るより明らかだ。
 奪い奪われ。殺し殺され。そんな日常がいつまで続くのだろうか。

 もしこの若き騎士達が生まれる前に戦争が終結していたのならば。
 そうであれば、いつの日もどんなに心穏やかであっただろうか。
 そうであれば、この若者達は年相応の生き方を選べたのだろうか。

 ――ふと、そんな想いがノイルズの脳裏に浮かんだ。



 リスティアの地には三大勢力とも言い得る巨大国家があった。
 礼節に重んじる清廉潔白な若き王レオンが治める紺碧の国ユニオン。
 革命の果てに政権を勝ち得た帝王ファウゼルが治める紅緋の国ログレス。
 魔術の権威として名高い女王ミューズが治めるの深緑の国アヴァロン。
 この三国である。
 リスティアを三つに分かつ各国は、古き時代から相争ってきた。
 それを剣の聖女と呼ばれる女性が鎮め、彼女が何処へともなく去った後も、リスティアには平和な時代が長く続いたという。
 しかし、永久とも思われた平和も人の欲や野望といった闇に蝕まれ始め、大なり小なりの諍いが各国で生まれ始める。
 話し合いの末に互いの要求を呑み、流血なき結末を迎える戦もあれば、圧倒的な戦力で敵兵をねじ伏せ、指導者の首を刎ねて終焉を迎える戦もあった。
 その戦の終結は様々だったが、共通しているのは開戦から終戦までの期間の長さ。つまり、過去の大戦に比べれば――失われた命の尊さは、多や少で語れはしないが――その規模たるや燻る種火のようなものであったのだ。
 だが、過去のとある事件によって、各国は本格的に領土拡大を目指すようになる。
『ログレスの大革命』――これが辛うじて保たれていた各国の均衡を大きく崩す切っ掛けであったのだ。
 ログレスの現帝ファウゼルがまだ一の騎士であった頃、ログレスは先帝アルスの圧政によってかつての栄華を失い、国民は皆疲弊していた。
 そんな中、ファウゼルが仲間と共に謀反を起こし、彼の王が処刑される事で革命は成し遂げられたのである。(ユニオンのレオンが自ら敵地に乗り込み、アルスの娘セフィア皇女を救出したのもこの革命の最中であった)
 革命により全権を掌握したファウゼルは、ログレスの新たな王となり国の再建を図る。その復興政策には領土拡大も含まれていた。
 つまりは、煙燻る地にファウゼルが戦火の一矢を投じ、それに呼応してユニオンは戦の終結と平和への道を目指して名乗りを上げ、その二国が争う中で更なる魔術の叡智を得んとするアヴァロンもまた名乗りを上げた、という事だ。
 戦争はまだ本格化には至っていないが、日夜に及ぶ命のやり取りが次第に激化している事実に、リスティアに住まう者達は皆怯えている。
 果たしてこの抗争はどのような形で終わりを迎えるのであろうか。――その答えは未だ誰にも見付けられていない。



「ノイルズ様?」
 長身のノイルズの顔を覗き込むようにして、ヒョウガが少々心配そうな表情をしている。それに気付いたノイルズは「おぉ」と小さな声を上げた。
 どうやら物思いに耽っていたらしい。だが、別段風景もそんなに変わってない事から察するに、そこまで長考していた訳でもなさそうだった。
「ノイルズ様、どこか具合でも……」
 続けて訊ねてくるヒョウガの深刻な声色。これは悪い事をしたのぅ、とノイルズはピンと伸びた眉を困ったようにしかめ、見上げてくる彼女の頭を軽く撫でる。
「心配を掛けてしまったな、すまんのぅ。だが、ワシはいつも通り元気じゃから安心しておくれ」
 落ち着いた柔らかな声色でノイルズが言うが、横に付いて歩く戦乙女は「本当に?」とでも言うような上目の視線で問い掛けてくる。それでもノイルズが小さく微笑みながらコクリと頷くと、ようやく彼女の表情がパッと晴れた。納得したという事なのだろう。
「あれ、どうしたんですかお二人とも?」
 何か異変がないかと真剣に周囲を見回していたリーシャは、ここにきて初めてノイルズとヒョウガのやり取りに気付いて小首を傾げる。
 ヒョウガはノイルズの後ろを軽い足取りで歩いてリーシャの横まで来ると、「ううん、何でもないよ!」と元気良く答えてニコッと眩しい笑みを浮かべた。続けてノイルズも「うむ」と微笑み掛けると、それにつられたリーシャも笑みを浮かべつつ二人の返答に納得したのだった。
 そんな三人の後ろでは、アーサーとシグレとジウが他愛もない会話をしながら歩いていた訳なのだが。
「そういえば腹減ったなー」
 アーサーは何の脈絡もなく突然会話をぶった切ったかと思うと、その勢いで空腹を訴えながら腹を擦る。確かに彼の腹部からは奇妙な異音が鳴り響いていた。
 ジウが慣れた手付きでレギンスのポケットから細長い鎖の付いた金色の懐中時計を取り出し、親指の腹で蓋を開けて時間を確認する。……なるほど、確かにそろそろ昼食の時間だ。こう毎回の事とはいえ、アーサーの腹時計の正確さにはいつも感心しきりである。
「ふふっ、今日も正確ですね、貴方の体内時計は。そろそろお昼になるようですよ」
 懐中時計をポケットに戻しながらジウが昼時だと告げると、アーサーは「だろぉ?」と得意げに胸を張った。その様子にシグレも口元に小さな笑みを浮かべる。
 先頭を歩いていたノイルズの耳にも勿論その言葉は耳に届いていた。
「おぉ、もうそんな時間か。それは腹の虫が鳴き出すのも無理はないのぅ」
「そーですよ、俺はもう腹が減って減って倒れちまいそうっすよ! ってな訳で、この辺で昼飯にしようぜ団長!」
 この場所を流れる空気のようにのんびりとしたノイルズの返事とは対照的に、アーサーは何が何でも昼飯と言わんばかりに少々強引な切り返しで意見を推す。それにノイルズはウムウムと頷くと、手で合図を切りながらその場で止まる。続けて騎士達もその場で歩みを止める。
「よし、それではすぐそこの――」
「ああーーーッ! あんなところでゴブリン達が畑を荒らしています!!」
 ノイルズの言葉に突然割り込む少女の悲鳴。言わずもがな、それは従騎士リーシャの無法者発見の叫びであった。
 リーシャの指先が指し示す方向を見れば、遠く離れた場所にポツンと建っている木造の小屋――その後方にある小さな畑に、幾つもの小さな影がうごめいているのが見える。緑色の体躯をした大量のゴブリンが、畑の作物を引っこ抜いたり引き千切ったりと、それはもうやりたい放題の収穫祭真っ最中ではないか!
「くっ、これからが収穫時期だというのに……」
 遠方の畑で行われる略奪行為に、シグレは眉間に深くシワを寄せて低く呟く。手に持った長槍を強く握り締め、いつでも駆け出せる体勢である。
「ううむ、すまんが昼食は後回しになるのぉ」
 休憩予定地だった場所を示していた指でノイルズは自らの頬を掻き、苦笑しながら申し訳なさそうに呟く。特に、唖然としたアーサーを見ていると、余計に申し訳なく思う。思うのだが。
 ノイルズの表情が瞬時に引き締まったかと思うと、彼は紺の外套から伸ばした腕を一度大きく振り上げ、
「しかし! 一仕事の後の昼食もまた格別じゃろうて! さぁ、往くぞッ!!」
 凛とした低い声で騎士達に号令を下す。そして自らも駆け出した。
「さぁさぁ皆さん、頑張って無法者達を懲らしめましょう!」
「えぇ、手塩に掛けて育んだものを横取りする行為は、人の法の外に生きる者であっても許されるものではありませんからね」
 騎士達を鼓舞するようにリーシャがペノンを高々と掲げ、続いてジウが彼女の言葉に賛同しながら軽やかに地を走る。
「シグレ、行こう!」
「はい、ヒョウガ!」
 ジウの後ろではヒョウガとシグレが互いに声を掛け合い、それぞれの武器を構えて走り、そして――
「ぐあああッ、せっかくのチャンスを先延ばしにさせやがって! テメェら、覚悟しろよチクショーーーッ!!」
 騎士達がそれぞれに呼応して走り出した中、憤慨する狩人の青年が全員を追い抜き、そのまま先頭を爆進するのは至極当然の成り行きで。



 アーサーの鬼気迫る後姿と、周囲を走る我が騎士団の若者達と共に地を駆け、想う。
 もし戦争が勃発しなければ、などという夢想をしたところで、戦乱の世という事実が変わる事はない。
 戦争のない別世界での己の生活も、この者達の生活も、各国の情勢も、その全てが見果てぬ夢の産物で、まったくの絵空事に過ぎぬ。
 過去の戦は消せぬ。抗争の傷痕も消せぬ。夢を見るだけでは叶わない――と。全てはそういう事だ。
 それは勿論理解しているのだが、争いなき世界という憧れが潰えることはないだろう。それはこれからも、ずっと。
 しかし、しかし。
 奇しくも、忌むべき戦争によってこの若者達と出会えたという事実がある以上、私はこの地に燻る戦争を完全に否定する事は出来ない。
 今も尚続く戦が元から存在していなかったのならば、私はこうして彼等と生死を共にする事はあり得なかったのだから。
 あまりにも矛盾した戦争に対する思想。それを自覚する度に、己の心の闇を見ているのだと思い知らされる。
 戦争という存在があったからこそ、大切だと思える存在に出会えたという思考。それに負い目があるのは言うまでもないだろう。
 だが。――否、だからこそ、と言うべきか。私は相反する思想のどちらかを捨てる気はない。
 何故ならば、平和への憧れは私自身の想いであり、この若者達との出会いは救いでもあり、つまりはその二つを併せて『大切な者達に、ひいてはリスティアに住まう者に平穏な未来を歩ませたい』という願いに繋がるからだ。
 戦を終わらせる為に戦へと身を窶(やつ)す事に対し、言い得ぬほどの虚無感に襲われる時もある。
 戦わせたくない者達を戦わせなければならないという事に対し、胸を掻き毟りたい衝動に駆られる時も大いにある。
 それでも。
 志を同じくして共に立ち上がった者達を生き残らせる為に。
 生きていて良かったのだと、幸せなのだと思える未来を掴んでもらう為に。
 騎士達が平穏な未来へと歩めるよう、私は己が持てる全ての知識を惜しみなく与え、我が命尽き果てるまで皆を生者の道へと導き続けよう。

 これがシュタルクシルト騎士団長ノイルズの、人知れぬ想い。




【End】
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