創作物置場

文章や落書きなんかを置いてゆく予定。

 
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【R-18/G○H】小説 その1

【嘘吐き狼 愚直な羊】
呪いによって無理矢理発情させられた重戦士と、
それを利用して彼を犯す重戦士の話。
(シグレ×ヒョウガ前提のエトワール×シグレ)

 素敵な呪い設定を教えて頂いたものの、ツイートではザックリとしか書けなかったのでリベンジ。
 設定を教えてくださり、ありがとうございました!
 このお話では、エトワールとシグレは何度か普通に顔を合わせている、という設定です。

 ※以下から腐向けR-18のお話となります。閲覧注意。





















「見ないで……くれ……」
 ただの一言だけ、シグレはエトワールの金目を見つめながら切なげに懇願する。
 彼はただ普通に昼下がりの森の中を歩いていた。それが何の脈絡もなく、突然己の内で異常なほどの性的欲求が湧き上ってきたのだから、彼はただただ戸惑っていた。
 具足以外の重い防具は装着していないにも拘わらず、膝下から力が抜けてしまって立つことも叶わない。正座をするような体勢のままでへたり込んでいたところに、駆けつけてきたエトワールに話し掛けられていたのだが、それはシグレにとって幸運だったのか不運だったのか。
 目の前の男が話し掛けてくる度に、その低音でよく通る声が全身を撫で上げるような感覚に襲われ、男の視線が己の股座を隠す両手に注がれていると把握した途端、レギンスを突き破らんばかりに張り詰めた自身から色欲を放出しそうになった。
 そう、最早エトワールの全てが、鋭敏になったシグレの性感を余すことなく刺激していると言ってもいいだろう。
 だが、シグレ本人も無意識の内に性感を刺激していた。自身を隠している筈の両手が、全身の震えを自身に伝達させてしまっているのである。それは異常な性欲の前ではあまりにも愚かしい無駄な努力であり、滑稽な姿ではあったのだが、そんなことにも気付けない状態にあるシグレは、ただただ股座を衣服越しに強く圧迫する他なかった。
 そして、情欲に呑まれそうになる己を無理矢理に律して、もうこれ以上見ないでくれと、関わらないでくれと切望したのだ。

 一方のエトワールは、明らかに普段とは違うシグレの様子に動揺していた自分が、彼を少々観察することで驚くほど早く冷静になってゆくのを実感していた。
 エトワールの普段の態度からは少々想像し難いが、実のところ彼はかなりの切れ者である。
 とある騎士団に所属する魔術師の青年が、エトワールに依頼されて選んだ呪いである禁呪『ムリムラ』。エトワールはその存在こそ知らなかったものの、目の前のシグレがこのような状態になっているのを見れば、どのような性質の呪いなのかは窺い知ることができた。
 何故禁呪と言われているのかまでは流石に彼にも分からなかったが、魔術師の青年が呪いの準備で姿を消して暫くしてから、先程まで普通に歩いていたシグレが突然泣き出して、何かを耐えるようにして股座を押さえつけて震え始めたのだ。呪いの影響で急に発情したと見ても間違いではないだろうし、実際にエトワールの推察通りであった。
 そこまで理解して、エトワールは内心ほくそ笑んだ。そしてゴクリ、と生唾を呑み込む。
 彼は現状を『好機』だと捉えたのである。
 目の前にいるシグレは、既に視線をエトワールから外してはいたが、微かに開いた唇からは艶やかな吐息が絶えず零れ落ち続け、酷く紅潮した頬にも新たな涙の粒が滑り落ち続けていた。
 股座を押さえる両手の震えも、明らかに先程よりも悪化して激しくなっている。否、無意識の内に強めていたのかもしれない。
 軽く吹いただけでも崩れてしまう組まれたトランプのように、今のシグレの理性は非常に危ういバランスの上で成り立っている。
 ――だから、吹いてやるのだ。邪魔な理性など崩してしまう為に。

「じゃあさ、このまま置いていってもいいの?」
 エトワールはシグレを抱き寄せて耳元に唇を寄せると、非情な言葉を絡みつくような甘ったるい声で囁いた。シグレの口から「ひっ……!?」とか細い悲鳴が上がり、肩がビクリと跳ね上がる。
 その様子に口角をニヤリといやらしく吊り上げたエトワールは、畳み掛けるようにして言葉を続けた。
「俺はそれでも構わないよ。通りかかった奴に助けを求めればいいだろうしな。……でもさぁ、それが野盗だったりしたらアンタは戦えるの? いや、戦えないだろうな。身包み剥がされるだけならまだマシだろうけど、口と尻穴にきったねぇモンぶち込まれたらさ……嫌だよなぁ?」
 片手はシグレの背中に、もう片方の手はシグレの腰に。ぺたんと地面にへたり込んでいる彼の腰を、エトワールがそれはもう優しくゆっくりと撫で回すと、シグレの全身が硬直して震えが更に悪化する。頬の辺りからは、歯がガチガチと小刻みにかち合う音が聞こえ始めていた。
「アンタが望むなら、俺が助けてやってもいいよ」

 じっくりと、じわじわと。退路を絶って、追い詰めて。でも、優しい声色を作るのは忘れずに。

「ほら、『ここ』も楽にしてやるからさ」
 エトワールはシグレの耳朶を舌でちろちろと舐めながら、腰に回していた手を彼の両手の上にそっと重ねる。
 一際大きくシグレの腰が浮いた。その弾みで股座を押さえていた両手を強く握り締めてしまった彼は、喉の奥から押し上げられた悲鳴も、腰を突き上げるような吐精感も抑えることは叶わず、全身をビクビクと痙攣させながら達してしまった。
 暫くシグレの痙攣も吐精も続いたが、ようやくそれらが終わったのかシグレは脱力したようにエトワールにもたれ掛かった。それからすぐに聞こえ始めたのは小さな、嗚咽。
 身体が異常な状態とはいえ、着衣したまま達してしまったという事実に、シグレは羞恥と己の不甲斐なさに唇を噛んで嗚咽を堪える。彼にとってはそれすらも恥である筈なのに、押し殺した嗚咽の断片は一向に消える気配を見せない。
 そんな一連の流れをただ静観していたエトワールは、耳に届くシグレの悲痛な嗚咽に、己の嗜虐心が煽られてゆくのをはっきりと感じていた。
 彼は脱力したシグレの両手の間から未だ張り詰めている一物を撫で擦りながら、失敗をして泣きじゃくる子供を慰めるかのように優しい優しい猫なで声で言った。
「心配するなよ。アンタが望めば、俺が助けてやるって言っただろ?」
 何を責めるでもなく、相手を思いやるが故に囁かれたと思われたその言葉。それを弱々しくすすり泣くシグレに優しく掛けるエトワールの顔は、薄気味の悪い微笑を張り付かせていた。
 しかし、シグレには彼の表情は見えはしない。
 シグレは苦しげにぎゅっと目蓋を閉じて、身を縮こまらせてただ震えていたが、その震える片手がゆっくりと遠慮がちにエトワールの衣服の端を握る。
「頼む……」
 また一言だけ、シグレは懇願した。滔々と湧き出し続ける性欲から、ただただ逃れたいが為に。

 堕ちた。――そう、エトワールは歓喜した。


 性欲からの解放を求めたシグレに、エトワールは一つだけ条件を出した。助けてやると言っておいてこの仕打ちだが、正常な判断が出来ない今のシグレは、条件付きということに何の疑問もなかったのである(勿論、エトワールはシグレが素直に従うのだと確信していたからこそ、このような条件を出した訳なのだが)。
 そして今、シグレはその『条件』を満たすのに必死になっていた。否、もしかしたら彼は条件とも思っておらず、当然の代価であると思い込んでいるのかもしれない。
「……うっ、あぁ……」
 シグレは口の端から零れた唾液が顎を伝うのにも構わず、木に背を預けて座った状態で両足を開き、レギンスから出した自身を目に涙を溜めながらも片手で上下に擦っている。黄の襟巻きの間から差し入れたもう片方の手は、尖りきった胸の先端をこね回していた。
 そんなシグレのぼやけた視線の先にいるのは、少し離れた位置に座るエトワールだ。その彼は、金目を細めながらシグレの自慰行為を黙ってじっと食い入るように見つめている。
 ムリムラの効力は常軌を逸脱していた。あの堅物が野外で自慰をして見せるだなんていう、普段ならば絶対に有り得ない展開にまで持ち込めたのだから、エトワールはただただ愉快で仕方がなかった。心が高揚して止まない。
 そう。エトワールは、恥も外聞も捨ててまで助けを求めてきたシグレに「アンタの気が済むまで付き合ってやるからさ」と言った後、「まずはアンタを苦しめるその『羞恥心』をなくそうか? 一発やそこらじゃ治まりそうもないからな。ヤる度にいちいち苦しんでたら、アンタもたねぇよ」と、さも正当な理由であるかのように自慰を促したのである。
 それを聞いたシグレは当然のように一瞬目を見開いたが、数秒の後に黙って頷いた。だからこそ、彼は今こうしてエトワールに自慰を見せている。
 のろのろとした速度で擦られているシグレ自身は、硬く反り返って張り詰めている。今にも達しそうな『ソレ』は、先端から透明な粘液をとろりと零し、竿が擦られる度に淫猥な水音が静かな空間に響いた。
 シグレの焦点の定まらない海色の瞳は、目の前にいるエトワールが見えているのかも怪しく、微かに開いた唇からは、言葉にもならない嬌声が熱い吐息と共に零れ落ち続けている。
(そろそろか……)
 エトワールは内心で呟いて立ち上がると、シグレの蕩けそうなほどにとろんとした顔を見下ろしながら、黒き感情が混ざった笑顔でこう言い放ったのである。
「もう止めていいよ。続きは空き家でやろうか」
 彼のスラリとした長い指先は、此処から200mほど離れた辺りに建つ空き家の方を指し示す。
 エトワールは、シグレが此処で達することを、許してはくれなかった。


 人が住まなくなってから、どのくらいの年月が建った小屋なのかは分からない。だが、そんなことなど関係なく、エトワールは肩を貸していたシグレを乱暴に簡素なベッドへ押し倒した。
 シグレは頭部から腰までをベッドに押し付けられた状態で、エトワールの方はベッドの縁に沿って曲げられたシグレの膝を割った状態で上体を折り曲げ、無理矢理に彼の唇を奪ったのだ。
 勢い良くシグレが押し倒された衝撃で、木造のベッドがギシリと軋み、無造作に掛けられていた毛布が形状を変えた。その間にもエトワールはシグレの唇を舌で割り開き、それで彼の逃げ場を失った舌と絡ませる。
 シグレのくぐもった声が互いの唇の間から聞こえるも、その声すら流れ込んだ唾液を掻き混ぜる音に掻き消されてゆく。
 空き家に入ってからのエトワールの行動は、あまりにも性急であった。だがしかし、エトワールもまた、艶やかに乱れるシグレを眺めて弄んでいる内に、そろそろ理性が本能に切り替わりつつあった。彼もまた性欲を我慢していたのだ。
 一方的な口付けだったものが、シグレが自ら求めることによって互いに求め合う形になり、エトワールの理性の糸はいよいよ切れた。余裕など、そこにはなかった。
 唇を離したエトワールは、さももどかしいと言わんばかりにシグレの具足を引き剥がし、レギンスを荒々しく引き摺り下ろして床に捨てた。下半身が外気に触れる感覚と、再び目の前の男に自身が晒されているという羞恥から、シグレはぶるりと身震いする。
 次にシグレの唇を指で押し開いてから充分に指を濡らすと、エトワールはその濡れそぼった指をシグレの後孔に宛がって輪郭をなぞった。後孔が濡れてぬるりと指が滑る度に、シグレの口から一際高い嬌声が上がる。それがまたエトワールの余裕を奪い去っていった。
 シグレの両脚がエトワールの手によって押し広げられ、その状態のまま位置を固定される。てらてらとした後孔にエトワールの剛直が押し当てられた瞬間、シグレが息を呑む間すら与えないまま『ソレ』はぞぶりとシグレの体内に突き入れられた。
 体内に異物が突き刺さる衝撃と痛みに跳ねる身体と、焼印を押し当てられたかのような苦痛の叫び。
 シグレ自身の中で鬱積していた白濁が、弾けた。


 何度も、何度も。それこそ空が朱色に染まるまで、エトワールは本能のままにシグレを犯した。
 また、シグレもムリムラによって高められた熱に浮かされ、うわ言のよう「エト、エト」と、時に切なげに、そして時に喘ぐようにして男の名前を呼んだ。
 エトワールは、既に自分が何回シグレの中に精を放ったのかも、シグレが何回果てたのかも覚えていない。
 ただ、シグレの後孔から血の混じった白濁液がどろりと零れ落ちる様子と、貫かれる度に抱き付いていたシグレが肩や背中に残した引っ掻き傷のじわりとした鈍い痛みに、エトワールの中で何とも言えない感情が生まれ始めていた。

 最初は良かった。
 シグレの弱味を握り、支配して、何度も犯して。
 愛しい者と交わる悦びと快感に、罪悪の欠片すらなかった。
 だが、何度もシグレを犯していると、悦びは疑問にすり替わっていった。
 快感を感じなくなるなんてことはなかったが、強制的に引き起こされた発情によって尽きることのない性欲に翻弄されるシグレを見て、ただただ「エト」と必死にしがみ付いて犯されるシグレを見て、胸の奥にチクリとした痛みを感じる回数の方が増していった。
 正直なところ、ムリムラの効力を舐めていた。
 シグレが積極的になったのも一過性のものであって、五発か六発くらいヤれば治まるだろうと、勝手に思い込んでいた。
 それがどうだ。シグレは呪いの呪縛で意識を失うことも許されず、湧き上がる性欲を満たす為だけに、性交という苦行を重ね続けている。
 これを苦行と言わずして何と言うのか。シグレは偽りの性欲によって、自分との性交を強いられているだけのことなのだから。

「エト……」
 喘ぎ過ぎて枯れた声は、辛うじてエトワールの耳に届いた。エトワールの意識が現実に引き戻される。
 エトワールはシグレを背後から抱いた状態で繋がったまま、無言でベッドに横たわっていた。
 少し前に互いの自身から精を吐き出した後、シグレはピクリとも動かず静かにしていたから、やっと眠れたのかと安堵して毛布を掛けてやっていたのだが……どうやら違ったらしい。エトワールは己にとって都合の良い勘違いに、内心で自嘲する。
「……なんだ?」
 流石にエトワールの疲労の色も濃い。思わず溜め息のような力のない返事をしてしまった。それに気付いて慌てて「わりぃ」と謝るが、謝ってから一体何が悪かったのかと自問した。やはり、疲れている。
 エトワール本人にも理由が分からない謝罪に、シグレは何も反応しなかった。否、反応するほどの体力も気力も残ってはいないのだろう。
 だが、シグレは自分を抱きしめているエトワールの腕にそっと触れた。触れる片手の感触は非常に弱々しいものだったが、確かに彼はエトワールの腕に触れていた。
 そして、

「ありがとう」

 掠れ声で呟かれたシグレの一言。それは危うくエトワールの耳を素通りしてしまうところだった。それくらいには、エトワールにとって予想もしていなかった言葉だったのだ。
「……は?」
 シグレの真意がまったく分からず、エトワールは思わず上擦った声を上げてしまった。その声を外へと通した彼の唇は、微かに震えていた。

 アンタは何を言っている?

 意味がまったく分からない感謝の言葉に、エトワールの思考は急に混線し始める。
 溜まりに溜まった疲労感も邪魔をして、頭の中が一瞬にして真っ白に染まった。その中では、先程のシグレの「ありがとう」だけが延々と繰り返し再生される。
 しかし、次にシグレが言った言葉によって、エトワールの脳内を支配する謎は融解した。
「お前が、いなけれ、ば……私は……どうなっていたか、分から、ない……」
 途切れ途切れの言葉は弱々しいものであったが、その中には確かに一本の意思が通っていた。これが熱に浮かされたうわ言ではないことを、我に返ったエトワールはすぐに気が付いた。
 だが、それに気付いてしまったからこそ、自身の中に芽生え始めたものが罪悪感であることにも気付いてしまった。
「は、はは……なんだ、そりゃあ……」
 放心したかのような乾いた笑い――自嘲と言い換えてもいい――が、エトワールの口を突いて出る。
 それからすぐに動揺が吐き気を誘発させた。エトワールは慌てて口を閉じ、一瞬にして干上がった喉を必死に動かして吐き気を堪えた。
 軽蔑されるようなことはやったが、感謝されるようなことは何一つやっていない、と。エトワールはそう考えていた。何故なら、ただ己の欲を満たすその為だけに、素知らぬ顔をして発情しているシグレに付け入ったからだ。
 それなのに、シグレはエトワールが首謀者であることも知らずに、利用されたことにすら気付かないまま、彼に深く感謝している。
 シグレが今、どんな表情なのかエトワールには分からない。だが、その穏やかな声色と、重ねた身体から感じる心音が、彼は嘘を言ってはいないのだと証明している。ただ純粋に、愚直なまでに、シグレはエトワールに感謝しているのだ。
 エトワールの表情から自嘲すらも消えた。ただそこにあるのは、憤怒。
 胸中の激情で戦慄く唇を、強く強く噛み締める。破れた薄皮から血が滲もうとも構やしない。
 愛しい男を抱く腕は、血管が浮き出るほど強く強く握り締められた拳と同様に打ち震える。
 シグレを抱き締める力もぎゅうと強め、朱の痣が刻まれた肩口に額を押し付けるようにして俯くエトワール。そんな彼の中で、何かが弾け飛んだ。
「俺が……ッ、俺がアンタに呪いを掛けてくれって依頼したから、アンタはおかしくなっちまったんだぞ!? ムリムラなんて知らねぇ呪いだったけどよ、俺はアンタとヤれるなら、何でもいいから利用してやろうって思ったんだよ……!」
 まるで喉を押し潰されたかのように低く、吸えない空気ばかりが混じる苦しげな声で。堰を切った激流の如く、激情がエトワールの口から勢いよく流れ出す。その荒々しい語調に混じるのは、どこまでも下衆染みた己への怒りと、何も知らずにその下衆に感謝するシグレへの苛立ちであった。
 自責の念に駆られることなど当たり前だとして、シグレに苛立つことは理不尽であるというのは、エトワールも十分に分かっていた。シグレは何も知らなかった上に、正常な判断が出来ないほど発情していたのだから。
 しかしエトワールは、薄汚れた心根を持つ男に感謝するこの誠実な男に対して、俺に「ありがとう」と言うのはまるで見当違いなのだと、そんな感情をぶつけずにはいられなかったのだ。
「だから……感謝なんか、しないでくれよ……」
 軽蔑しただろう、と。そんな問いを一つ、呑み込んで。目頭の熱さに気付かないふりをして。
 自ら望んで醜態をぶちまけたというのに、シグレがこの腕からすり抜けていってしまうのではないかと、そんなことを考えたら怖くなった。そして、また自分のことしか考えてないという己の浅ましさに心底呆れ果てた。
 くつくつくつ、と喉の奥で忍び笑う。眉間に深く皺を寄せて、片側の口角を無理矢理に吊り上げた表情をしながら。
 己の精神の脆弱さが酷く滑稽で、酷く腹が立った。シグレの声がしない、この空間にいるのが怖かった。だから、エトワールは無理矢理にでも笑うしかなかった。
「そう、か。これは……呪い、だったのだな」
 再び聞こえたシグレの掠れ声に、エトワールの忍び笑いが途切れる。寧ろ、呼吸を止めたと言った方が正しいか。
 エトワールの返事はなく、彼は身動きすらしない。シグレは一拍置いた後、もう一度彼に話し掛けた。
「お前が、原因であろう、とも……こうして、鎮めて……くれたのも、お前だ」
 途切れ途切れの言葉に、咎めるような響きは含まれていない。それに居た堪れなくなって、エトワールは弾かれるようにして顔を上げた。
「ちっ、違う! 俺はただアンタと……」
「過ぎた悪戯は……私も、感心しない。だが……お前で良かったと、そう思っていた……」

 俺で、良かった……?

 それこそ予想外過ぎて。エトワールの見開かれた金目は動揺で震えた。腕の力がふっと抜ける。
 あれだけ酷い激白をしたというのに、あんなにも恥辱を味わわせてしまったというのに、この腕に抱かれている男は、己が身を苦しめる呪いを『悪戯』と言い、己が身を犯す相手が『首謀者』で良かったと言い切ったのだから。
「気が狂ってしまい、そうだった……から、な……。一人であれば……他者であれば、どう、なっていたか、分からん……」
 そして「感謝する」と。シグレは確かにそう言った。揺るぎない意思で以って、その言葉を口にしたのだ。

 こんな目に遭ってまで、アンタは俺を赦すのか。

 気が付けば、見開いた黄金色の双眸からは涙が溢れ出していた。
 薄く開かれた唇は、何か言葉を紡ぐでもなく、ただ開いているだけで。
 エトワールはただ、今も己と繋がっている男を、先程とは違って優しく抱き締めることしか出来なかった。

 声はしなくとも、エトワールの抱き方が変化したことにシグレは気付いた。そして声を掛けようと思ったのだが、意識が鮮明になってゆくにつれ、鎮まった筈の熱が再び高まってきて、「んっ……」と艶やかに呻く。
 落ち着いていた自身に熱が集結してゆく感覚も、胸の頂が次第に鋭敏になってゆく感覚も、そしてエトワール自身を咥え込む体内が痛みと快感で疼く感覚も、その全てが彼に犯され続けていた時と同じだった。
 はぁ……と、シグレの口から微熱を含んだ吐息が漏れる。鮮明になりつつあった意識は、再びゆっくりと情欲の海へと引きずり込まれてゆく。
 シグレは静かに目蓋を閉じて、己を抱く男の腕にそっと手を重ねた。
「エト……何度も、すまない……」
 まだ理性がある内にと、シグレはエトワールに自らの意思で身を預ける。すると、首筋に温かで柔らかな唇の感触が伝わってきて、シグレはそこを軽く吸われただけで達してしまいそうになった。
「解った」
 首筋から柔らかな感触が離れた後、エトワールの囁くような小さな声が耳元で聞こえた。その優しく響く低音の声は、ただひたすらにシグレへの想いに満ちていた。
「ごめん……ごめんな……。今度は出来るだけ痛くしないようにするから……」

 この呪いが消え失せてからも、俺はアンタを愛し続けてもいいだろうか?



【End】
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